お前の中の何かを吐き出させてやりたいから、俺はお前に言ったんだよ。 絶対に吐き出される事がないだろうって思ってた言葉を、この喉からお前を打ちのめすために。 手を差し伸べる事を嫌がるとは思ってないけど、その手は取らないだろ? お前は一人じゃないなんて言いながらも、何よりも一人に焦がれてる矛盾野郎だって知ってるから。 例えば今、俺がどこかに消えてしまっても。 お前は手に持つものすべてをかなぐり捨ててまで俺を捜しはしないだろ? わかってる。ちゃんとわかってるよ。 だから俺も、そんな突き付けるような事はしないんだ。 お前がお前のままでいるために、俺が俺のままでいるためにね。 ほら、今日もお前はどこかで確かに息づいていて。俺もどこかで息づいているんだ。 まるで何もかも繋がりあった時のように、まるで何もかも突き放した時のように。 傍に居ても何もわからない。 何も解決しないってわかってるんだよ、俺たちは。 中途半端な馴れ合いなんて、俺たちは求めてないだろう? 声が届かなくったって、それを確かめなくったってお前は前に突き進むだろうから。 例えばこの地上に鎖で繋ぎ止めていても、例えば一緒に俺が居たとしても お前はその鎖を引きちぎってあの空を目指すだろう? 誰かの手のひらの上と知りながら、そいつを逆に貶めるために。 例え俺ひとりがそこに取り残されるとわかっていても、お前はあの空を目指すだろう? 何もかも知っていて、そしてそれが悔しかったから俺はお前を打ちのめすために言ったんだよ。 離れるなんて思ってないって、なんて傲慢だって思わない? 離れるなんて思ってないって、なんて自信だって思わない? そんなものを全部壊してやるために、俺はお前の好きなこの声で、お前が欲しがったこの声で。 お前が一番好きなあの表情で、お前以外誰にも見せない笑顔で。 お前が一番言われたくなかった言葉を言ってやったんだよ。 お前が一番傷付く言葉を。 「さよなら」 ただ、それだけを。 |