第弐話。



sweet dreams

第二話 いつもの日常生活














「起きろ、清信」


「ん〜…」


なんでお前がここにいんの、なんてのは愚問。


だから太陽の光を浴びてる奴の後ろ姿を、じっと見つめた。


眠いんだけどさぁ、今何時だ?


「ったくほっとくと一日中眠っちまってんだから。飯食え、作ってやるから」


時計の針を確認して、俺はちいさく伸びをした。


「お前さぁ…誰かに襲われっぞ、んな恰好してっと」


そんな恰好と言われた姿は、潤から譲ってもらったデカいTシャツにジャージ。


俺には普通なんだけど、多分潤の言いたいのはこのデカいTシャツ。どっちか一方にこれがズレたら肩が見えるだろうから。


「お前に襲われる心配はあるけどね」


あっさりと返して、いつも通りインスタントコーヒーを濃いめに入れて飲み下した。


がしゃんと潤が何か落とした音に一瞬殺意が沸いたけど、そこに割れる音が含まれなかったのでとりあえず許すとして。


「おまっ…なに言ってんだ」


「否定は出来ないだろ」


半分くらい残して、洗顔と歯磨きの為にその席を離れる。キッチンから潤が何か作ってる音が聞こえる。


それを聞きながら、結婚とか同棲ってこんな感じかななんて気持ちになる。


思ったとたん、自嘲気味に笑って俺は頭を振った。























 結婚? 同棲?





 ……傍にいるなんて事さえ、もう出来ないくせにね。























「清信?」


ぼんやりしてるように見えたのか、潤が不思議そうに俺を見ているのを鏡越しに見ていた。


「ん、なんでもない」


幼なじみだからわかる感覚。吏歌もわかる、この感じ。


そう言い置いて、俺はさっさと残りをすませて潤の居る方に向かう。


そこにはちゃんと盛りつけすればそれなりに見えるだろう料理の鍋に入ったままのスパゲティがあった。


「ちゃんと皿に入れなよ」


俺ん家の皿の配置なんて、もうわかってるくせにさ。


返って来る科白もわかってるけど、あえて言外にその意味を含ませて言ってやると案の定の答えが返ってくる。


「めんどくせぇじゃん」


そういってる最中にも、潤は戸棚から皿を出す。


「結構うまそう」


「うまそうじゃなくてうまいの。オレ様が作ったんだから」


「あーはいはい」


なんて聞いてないフリをしながらそれを皿に取って、一口食べる。


うん、美味しい。


「……伸びたな」


は? と言いそうになって、潤を見てみると。


俺の髪を見ていたみたいだ。


淡い色をした、今は……背中まである髪。


吏歌の事でも思い出してるんだろうな。


俺見て思い出すなよ、吏歌と俺なんかくらべものになんないんだからさ。


そうされる人間の事わかってんの?


「………そうだね」


一言だけ言って、俺はまた食べた。


お腹空いてたんだよねー俺。


「吏歌、いつ戻るって?」


「あさって」


あ、そうだ。


「お前、迎えに行けよ」


命令形で言ってやると、潤は実に情けない表情で俺を見た。


なんで? と口を開く前に先制攻撃で言ってやる。


「俺バイトあるから。お前オフ日だろ」














お前と吏歌のツーショットなんかこれから嫌ってくらい見るんだから、逃げさせろよ。


そんな事言ってやらないけどね。

















その代わり、俺から別れてやるよ。











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