第十一話。



sweet dreams

第十一話 最後の告白














「おはよ」


誰よりも先に潤に会って、こっちに気づいていない間に先制攻撃を仕掛けてやった。


振り返った時には潤は唖然とした。


「しの……お前、髪……!」


「なに?」


「……綺麗な、髪だったのに」


名残惜しそうに俺の頭を撫でて。


潤はぽつりと呟いて、潤はわずかに顔をしかめた。それが、痛みを含んでいるようで。


「お前」


さらさらと、短くなった髪を梳きながら潤が呟く。


俺はじっとされるがままになっていたけど、潤のあまりにも思い詰めたようなその表情に軽く首を傾げて促した。


「バンド…辞める気か?」


2人で話して、やろうと言ってたバンド。潤ほどではないにしろ、上達したギターは俺の押し入れの中にちゃんと収まっている。


「辞めるもなにも」


はっ、と笑ってやり、俺は俯いた。


「なんにもやってないよ、俺たち」


諦める事には慣れたはずだ。


あいつが死んだ時も、潤が好きだと自覚した時も、両親が離婚した時も。


そして、潤に抱かれる時も。


何も期待しないように、何も求めないように。全部を捨てたとしても、俺には残されるものなんてない。


与えられるものがなかったから、与えていただけで。


代わりのものなんて欲しくなかった。


諦める事に慣れた。与えられない事に慣れた。


何もかも、もう大丈夫なんだ。


お前さえ引き留めなかったら、俺はどこまでも歩いていけるんだよ、潤。


「清信」


抱き寄せられて、俺は抵抗しようとした。


その手を取られて、逆に抱き込まれて。


「……清信……」


「好きだよ」


ぽつりと呟く。最後だって思ったら、もう言っておくしかない。


「お前の事、ずっと好きだった」


「しの…」


「返事、言わなくていいよ」


もうわかってるから。これ以上、傷つきたくないんだ、悪いけど。


「じゃあね」


私服で現れた俺に、さほど動揺もしてなかった。


ほんとは逢わないでおくつもりだったんだけど、でも最後なんだって思ったらどうしても逢いたかった。


潤に、本当の気持ちを伝えたかった。


愛されたいと願ってしまった。


俺がこんなに好きなんだから、お前にも同じくらい想ってもらいたいと。


そんな浅はかな願いを抱いてしまった。


でも、これでもう終わるから――――もう、お前は苦しまないですむから。


離してあげるから。





























さよなら、潤。





























10年間の想いと一緒に、俺たちは離れた。











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