alone














「俺はいつだってお前の考えてる事は分かんないよ」


自分の言葉に、Jは呼吸を止めたみたいに止まっていた。だって何も分からないんだからしょうがなかった。


普段交わす言葉が多少少なくても、それは分かる事ができても、それ以外の事は全然わからなかった。


「どうする?」


「何が」


「俺を。どうしたいの」


ふふっと微笑ったイノランの笑顔は酷く魅力的で。


けれど、その美しさ故に潜ませた残酷さもまた自分を酷く魅了していた。


「この道をまっすぐ行けばお前ん家。右に行けば隆ちゃん家、左に行けば俺の家」


さぁ、どうする? と首を傾げられても、どうしたいのかは分からない。


冷静になろうと思えばなろうとするほど警告音が鳴り響き、怖いくらいの赤いランプが目の前を遮る。


「………言っとくけど」


黙ってしまった目の前の彼を差し置いて、先手で声を紡ぐ。


きっと彼が欲しいのは自分じゃない、自分の隣でいつも笑ってくれる、あの綺麗な人なのだと気付いていたから。


「隆ちゃんは、あげないよ」


これ以上ないまでに彼を求めていたのも知ってる。そしてそれを知っていたからこそ、自分は彼を堕としたのだから。


「あげるのは俺だけ。隆ちゃんは、Jにはあげない」


いっそ冷たいまでの視線が痛くて、彼はそっと目を逸らした。


この幼馴染みにどこまで自分の内を見られているのか分かったものじゃない。


もしかしたら何もかも分かっていて、それで自分の滑稽な芝居に付き合ってくれているのならこんなにタチの悪いモノはない。












































だけど。


だけど、もしもあの芝居の裏に気付かないままでこの言葉を言ってくれているのだとしたら?















































「お前は、くれるんだ?」


「カラダだけはね。ココロは、あげない」


その言葉に幼馴染みのかすかに笑った笑顔が凍ったのを、イノランは冷たく見つめていた。


カラダはあげる。だけどココロはあの人だけのモノ。


そうイノランが決めたのはいつだったか。


いつもあの人を狙う人を敏感に察知した。そんな人たちを、誘惑して、突き放した。


Jもその内の一人だと言ったら、この幼馴染みは自分を殴るだろうか?


「ねぇ、でも」


首を傾げるフリをして、誰にも捧げない身体を安売りする子供だと自嘲する。


「J一人じゃないよ。俺がこんな風にするのは」


誘ったのは、一人じゃない。片手じゃ足りないほどの相手に抱かれてきたから。


そしてあの人は、何もかも知ってて、それでも自分を愛してくれるから。そんな優しい人だから。


「それでも良いの?」


どれだけ自分が無邪気な笑顔で見つめているのかを知らないだろうイノランを、ただ黙って見つめるだけしか返せなかった。


泣いているようにも、嘲るように笑っているようにも見えた笑顔が。


どうしてだか抱きしめてやりたいと心底思った。












































「お前が俺を抱いても、俺は隆ちゃんのモノだし。隆ちゃんは俺のモノだけどね」












































ふわりと体温に包まれた後でも、酷く冷たい響きを持った言葉が哀しかった。